ニックネーム:Takelph
隠居鍛冶屋の旅日記(主にゲームという名の仮想現実内で)

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2008年03月21日(金)
獅子の誇り
 Matias大公国を解散した後、Nalsival元大公殿下が起こしたパラディンギルドの名前が「the Pride of Lion」と決まったのはもう一年半ほど前になるか。「獅子の誇り」と訳せば聞こえはいいが、私は一抹の不安がよぎるのを隠せなかった。

「誇りは驕り。」と教えられたのは、アバタールの探求の世界でのことだった。旧Maginciaの住民は彼らが徳と信じた「誇り=Pride」を悪魔によってつけ込まれて滅びたという。その後復興した新Maginciaにおいては過去の反省からPrideの正反対である「謙譲=Humility」が彼らの徳と定められた。
 Britanniaの八つの徳は「愛」、「真実」、「勇気」の三つの原理の組み合わせより導かれるが、「誇り」とはその三者いずれをも含まないものであるという。だが当時この平行世界に置いてアバタールになるための修行を積んでいた私にとって「誇り」と「名誉=Honor」の違いが判り難かったものだ。英語から日本語への訳し方の問題もあったのかもしれない。だがこれは三つの原理から考えていけば明快に区別しうるものになる。「名誉」とは真実を遂行する勇気のことであり、そこには「勇気」と「真実」が必ず含まれる。一方で「誇り」とは自分達の自尊心が傷つくのを恐れて「真実」を捻じ曲げ、その過ちを認める「勇気」を失った状態である。当然そこには他者を思い遣る「愛」もない。だから本当の第八の徳であった「謙譲」は、自分達がその三つの原理のいずれをも持っていないことを認めるという心構えであったのだ。
 私が危惧したのは、殿下がPrideという言葉の持つ不吉な意味を理解せず、旧Maginciaの住民が見誤ったように「名誉」のより進んだ状態のように聴こえる「誇り」という言葉の持つ妖しい輝きに魅せられてしまったのではないかというようなことだった。
 だが、殿下がそれぐらいの言葉を理解していないはずがない。むしろ、敢えて反徳を表す言葉を使うことで自分達が単純な徳の陣営ではないということを表明したかったのかもしれないと感じた。そう言えばもともとMatias大公国は、大地の蛇の修道会を信仰していることから分かるように徳や混沌といった既存の価値観に捕らわれずに調和を目指す国家だったのだ。だが、大公殿下の本来の気性や後から大公国に参画していった私達の性格を反映するうちに、大公国は聖徳の王国と双璧を成す徳の陣営の雄ということになってしまった。しかしそのことは後にGillette大公妃殿下の離反と漆黒騎士団への加入という事件に繋がっていったのだ。紆余曲折を経て彼女は大公国に戻り大公殿下と永遠の愛を誓うことができたのだが徳に偏りすぎることに対する反省が殿下にはあったのかもしれない。またアバタールが生まれたオリジナルのBritanniaとは異なり、宝珠の破片の中に生まれたこのBritanniaにおいて、旧Maginciaは滅びることなく繁栄を続けている。
 また、私は「Pride」という言葉が「Lion」という動物と重なったときに生まれるもう一つの意味に気がついて納得させられてしまった。ライオンの群れのことを英語ではPrideとも呼ぶのだ。即ち「the Pride of Lion」を「獅子の群れ」と訳すこともできる。殿下が考えたにしては出来過ぎに思える非常に洒落た名前でもあったわけだ。
 私は、上述の2つの理由によって殿下の気持ちを汲みとったつもりになり、また私自身はこの職業パラディンギルドに所属する気もなかったので、このギルド名に対して強く異を唱えることはできなかった。
 
 その一年後、獅子の城が崩壊した。

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