ニックネーム:Takelph
隠居鍛冶屋の旅日記(主にゲームという名の仮想現実内で)

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2009年03月06日(金)
闇の聖典:黒と白
「あら、先を越されたようですわね。」

 ドラコンの司教ベアトリクスは壁にぽっかりと開いた穴を見てそう言った。彼らもまた城の執事の依頼を受けこの洞窟に王に呪いをかけた者を探しにきている冒険者だ。昨日ついに3つ目の金のメダルを手に入れたところだった。
 穴の奥にあったエレベーターを利用して各階を調べてまわる。地下3階と地下4階は特に何もなく、最下層の地下6階では鍵穴もなく押してもびくともしない石の扉に行く手を遮られておりそれ以上は進むことはできなかった。結局、先に進めそうなのは「白と黒に別れた部屋」という札のある地下5階のみである。

「なんだ、ここは!」

 ラウルフ侍のャストキが叫んだのは、前回、ナルシヴァルたちが遭難した地帯に踏み込んだからだ。一歩ごとに現れるダークゾーンとそのダークゾーンに仕掛けられた回転床。探索者を惑わす罠としてこれ以上のものはそうはないだろう。幸いこのベアトリクス達のパーティーの場合は、Lv1の魔術呪文をであるDUMAPICを唱えることのできる者は、侍のヤストキ、司教のベアトリクス、吟遊詩人のキリーと3人もいたため、完全に道に迷うことはなかった。

 先頭を歩いていた戦乙女ベルリオースが皆を制止した。何人かの人影がダークゾーンに囲まれた空間に円陣を組んで座っていた。これは冒険者が迷宮内で安全に休息を取るために行うキャンプという行動であり、魔物がそのようなことをすることはなかった。そのうち何人かは生きているのか死んでいるのか石床に横たわっていた。

「む、お主等は…。」

 道に迷い、仲間も倒れ途方に暮れていた戦士達が近づく冒険者に気がついたようだ。そのうち人間の君主が、こちらに声をかけてきた。

「すまない。この忌々しい場所で道に迷ってしまった。仲間も倒れてもはや無事に帰れるあてもない。どうか我々を街まで運んでくれないだろうか。もちろん、相応の報酬もしたいと思う。」

「こいつら、俺達より先にここにいたってことは、ライバルだよな?助ける必要ないんじゃねぇか?」と悪の兜を被ったモホークが後ろを振り返りつつ囁いた。
「お待ち下さい。あの者の目をご覧下さい。あの者を助ければ必ず以後我々にも利益をもたらすに違いありません。」それを制して振り返りもせずに言ったのはベルリオースだった。

 しばらく黙っていたこの悪のパーティーのリーダーであるベアトリクスは、やがてこう言った。
「ベルリオース、そなたの見立てを信じましょう。」

 普段、街の酒場で出会っても決して同じテーブルに就くことのなかった者たち同士が、ついにこの洞窟の深部にて出会い、お互いに協力することとなった。


2009-03-06 | 記事へ | コメント(5) | トラックバック(0) |
| Wizardry: Scripture of the Dark |
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 善のパーティーと悪のパーティーは本来ライバル同士。
そう簡単には協力しあわない、というのが私のいつもの最初の設定なんですが、一方でノーリセットプレイにおいては彼らが助け合わないとやっていけないのが事実。
それで、いつもお互いに助け合うようになるための脳内イベントをいろいろ妄想してしまうわけです。
Wiz系のゲームは妄想を働かせると、DQやFFといったRPGよりも遥かに面白くなりますね。
逆を言えば妄想なくしてWiz系のゲームを遊んだら半日で飽きてしまいそうです。
 Wizardryは、システムやシナリオがシンプルでプレイヤーの想像に任された部分が大きいからこそ余計、様々な妄想が膨らみます。UOでのロールプレイにおいてもその場面をリアルに想像することによってより見えないはずのものが見えたりもしました。想像こそゲームを楽しむ最大のスパイスですね。
ファンタジー小説ですねぇ。
次が楽しみです!
 小説に仕立て上げるまでの才能があればいいのですが、残念ながら私にはそこまでの才能がありません。これらは断章的に浮かんだ心象風景といいましょうか・・・。次があるかどうかはわかりませぬ。申し訳ない。
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